2026.01.27
アプリの運用に関する相談をお受けしていると、「これからマルチチャネルに取り組んでいきたい」という声をお聞きすることが少なくありません。その一方、「マルチチャネルに取り組んでいるが、全体として何をやっているのか説明できない」「社内、部内でチャネルや施策に関する議論が断片的なものに終始してしまっている」といった状況に陥っているケースも少なからずあるようです。
そこで、今回から数回にわたり、「マルチチャネル入門」として、マルチチャネルを単なる施策の集合ではなく構造的に捉え、上手に活用していくための情報をお伝えしていきます。
第1回は、マルチチャネル施策の背景や前提となるものを整理しながら、どのように取り組んで行けばよいかを考えていきましょう。
さまざまなシーンでマルチチャネルの重要性が叫ばれる今、Web・アプリ・メール・LINEなど、複数のチャネルを使った施策に取り組んでいる企業も多いのではないでしょうか。
一方で、「今やっている施策は、本当にこのままでいいのか」「そもそも、何のためにマルチチャネルに取り組んでいるのだろう」といった疑問や不安を抱えながら、手探りで施策を進めているという声も少なくありません。
こうした悩みの多くは、施策やチャネルといった手段の話から入ってしまうことに起因しています。
今回は、顧客行動や市場環境の変化を手がかりに、マルチチャネル施策をどう捉え、どのように施策を組み立てればよいのかを整理します。
マルチチャネルとは、複数のチャネルを通じて顧客との接点を持つマーケティング手法のことです。
以前は「店舗だけ」「ECだけ」といった単一チャネルでのマーケティングが一般的でしたが、現在では、店舗・ECサイト・アプリ・メール・LINEなど、複数のチャネルを前提として顧客とのコミュニケーションを設計することが当たり前になっています。
実際、2017年に「ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載された研究では、小売業の消費者の73%が複数のチャネルを利用していることが示されています※1。
では、なぜここまでマルチチャネルが注目されるようになったのでしょうか。「顧客行動」と「市場環境」の2つの側面から、その背景について解説していきます。
※1 A Study of 46,000 Shoppers Shows That Omnichannel Retailing Works(Harvard Business Review)
マルチチャネル施策が求められる背景として、まず消費者の行動が複雑化し、購買までに多くの接点を経由して意思決定を下すようになったことが挙げられます。では、具体的に顧客行動がどのように変化しているのかを見ていきましょう。
ひとつのチャネルだけで情報収集から購入までを完結させる消費者は少なくなり、その代わりに複数のチャネルを活用しながら購買を進めることが一般的となっています。
たとえば、
こうした行動は、決して特別なものではなくなりました。
顧客の行動が複数のチャネルにまたがる以上、店舗やECサイトなど単一チャネルの体験を整えるだけでは十分とはいえません。メールやLINE、アプリなども含め、さまざまな接点で一貫した情報提供やフォローを行う必要性が増しているのです。
商品やサービスに触れた後、消費者がその場ですぐに購入を決めるケースも少なくなりました。気になる商品を見つけたら、まず別のサイトで口コミやレビューを調べたり、SNSで評判を確認したり、時間を置いてから改めて検討したりと、情報収集や比較を重ねる行動を取ることは一般的になっています。
実際に、「消費者は購買に至るまでに平均して5〜6回のタッチポイントを経由している 」という調査結果※2もあります。
ここで企業側が注意したいのは、顧客は複数のチャネルを無意識に行き来しているという点です。企業側がチャネルごとにKPIを設定し、別々の意図で運用していたとしても、消費者が求めているのは、あくまで「ひとつのサービスとしての連続した体験」なのです。
こうした顧客行動の変化を踏まえると、チャネル単位での施策だけでは不十分になりつつあり、顧客との接点全体をどう設計するかという視点が、これまで以上に重要になってきているといえます。
※2 What are customer journey touchpoints?(Feefo)
顧客行動だけでなく、企業を取り巻く市場環境そのものも今大きく変化しています。次に、企業を取り巻く環境が具体的にどのように変わってきたのかを整理していきます。
デジタルマーケティングの理論が成熟しつつある今、どのチャネルでも“定石”といえる施策が増えてきました。
LINEでのクーポン配布、メールでのキャンペーン案内、アプリでのポイント付与など、一つひとつの施策自体は、もはや珍しいものではありません。その結果、チャネル単体の施策だけでは差別化が難しくなり、成果も頭打ちになりやすい状況が生まれています。
こうした状況のなかで顧客との関係をより深めるためには、「何をやるか」よりも「どう組み合わせ、どう体験としてつなげるか」を考える必要があるのです。
広告費の高騰や競争の激化により、多くの業界で新規顧客の獲得は以前よりも難しくなっています。その結果、新規顧客を増やすこと以上に、既存顧客といかに関係性を維持し、リピーターとして繰り返し利用してもらうかが、事業成果に直結するようになりました。
この流れのなかで重要になるのが、顧客との接点を途切れさせないことです。
来店が途切れた顧客にアプリで特典を届ける。一定期間ECの利用がない顧客に、メールでポイントの有効期限を知らせる。このように、顧客との接点を途切れさせないためには、複数のチャネルを使いながら関係性を維持していくことが欠かせません。
ここまで見てきたように、顧客行動や市場環境の変化によって、マルチチャネルでのコミュニケーションは多くの企業にとって避けて通れないものになっています。一方で、「マルチチャネルに取り組んでいるはずなのに、成果が見えない」という声が多いのも事実です。
最後に、マルチチャネル施策を機能させるために押さえておきたいポイントを紹介します。
マルチチャネル施策を成功させるには、「アプリ担当」「Web担当」「CRM担当」といった部門間の壁を越えた連携体制を整えることが欠かせません。
事業全体のビジョンについて、メンバー全員が共通認識を持ったうえで施策に取り組めるようにするためには、戦略の全体像を可視化しておく必要があります。たとえば、売り上げなどのKGIから逆算して施策レベルの目標を設計するKPIツリーの作成は、部門間の認識をそろえ、連携を強化するために有効な手段のひとつです。
KPIツリーの作成については、以前OMO施策に関する記事のなかでも解説しています。基本的な考え方は同じなので、ぜひ参考にしてください。
⇒【デジマの悩みに答えます!】OMO施策を成功に導くために「KPIツリー」を作ろう(Repro Journal)
マルチチャネル施策は、チャネルごとの成果を見るだけでなく、全体としてどのような効果が出ているのかを確認しながら進めていく必要があります。
メールの開封率やアプリのDAUといった個別のKPIだけを追っていると、どの施策が最終的な事業成果に寄与しているのか見失いかねません。事業全体として優先すべき施策の検討をスムーズに進めるには、CDP(Customer Data Platform)やMA(Marketing Automation)ツールを活用しながら、 顧客の行動全体を適切に把握することが重要です。
先述のとおり、顧客は複数のチャネルを使い分けながらも、チャネルごとの違いを意識しているわけではなく、サービスとして一貫した体験を求めています。そのため、マルチチャネル施策においては、全チャネルで方針を統一し、連携したアプローチを行うことが欠かせません。
あくまでも一例ですが、次のようなシームレスな体験設計が求められます。
どのチャネルを利用しても安心してサービスを使える状態を整えることで、顧客との信頼関係が深まり、継続的な利用や購買につながっていきます。
顧客行動や市場環境の変化によって、複数のチャネルを使ったコミュニケーションは、多くの企業にとって避けて通れないものになっています。一方で、複数チャネルを使うこと自体が目的になってしまうと、負担は増えても成果に結びつかない状況に陥ることにもなりかねません。
これまで述べてきた通り、マルチチャネル施策を成功させるためには、「誰のどんな課題を解決したいのか」「顧客とどんな関係を築きたいのか」をあらかじめ整理したうえで実行に落とし込む必要があります。「新規顧客の獲得を増やしたい」のか「既存顧客のリピート率を高めたい」のか「認知を広げたい」のか「ロイヤル顧客を育てたいのか」。目的を明確にすることではじめて、どのチャネル・施策にどれだけのリソースを投下すべきかを判断できるのです。
Reproでは、集客・体験設計・改善サイクルまで一貫してご支援しています。「今の集客が正しいのかわからない」「数は取れているはずなのに成果につながらない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
★次回は、「マルチチャネルの全体像」と題し、部分最適に陥らず全体として成果につなげるための考え方を解説していきます。
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